SNSへの転載はどこまでならOK?著作権侵害にならない引用の範囲や投稿事例
SNSはもはや生活の一部です。
気軽に投稿できるのがメリットですが、無断で有名人やキャラクターの画像を投稿してしまったことはありませんか。
「これくらいなら大丈夫」と思って、SNSに投稿すると著作権侵害となる可能性があります。
SNSへの転載は、どこからがNGになるのでしょうか。今回はSNSと著作権侵害について紹介します。
目次
どこまでがNG?SNS投稿で著作権侵害になる身近な例

自分で撮った写真や動画、自分で創った文章を一瞬で発信できる時代になり、便利になった反面、悪気なく投稿した内容が誰かを傷つけたり、財産を奪ったりしているかもしれません。
2021年、ファスト映画、いわゆる「まとめ動画 」を投稿した3人が全国で初めて、著作権違反で逮捕され、有罪判決が言い渡されました。
ファスト映画とは、字幕やナレーションを付けて映画のあらすじや結末までをコンパクトにまとめた違法映画です。
ネットの世界には「まとめ動画」といわれるジャンルの動画が無数に存在します。
そのような状態の中で有罪判決が出たことは、世間に大きな衝撃を与えました。
このように、ネットの世界では慣例的に受け入れられてきたものであっても、実際は著作権侵害となる事例が、実は私たちの身近な所にもたくさん存在しています。
Instagram、Twitter、TikTokといったSNSで問題となる、身近な例を紹介しながら、どの点が無断転載や改変に当たるのか、また、 どのような投稿方法であれば、著作権侵害にならないのかも併せて説明します。
好きな映画・漫画の画像を投稿する
お気に入りの映画のワンシーンや漫画の一コマを画像付きで投稿する行為は、著作権法の複製権と公衆送信権、著作隣接権の侵害となります。
ポスターやジャケット、表紙を自分で撮影して投稿した場合でも、著作権法に抵触する可能性があります。
ただし、街の風景のワンシーンとして映画のポスターや漫画の巨大広告が写り込んでいても、著作権侵害にはあたりません。
SNSのアイコンに好きな芸能人やキャラクターの画像をネット上から取ってきて使っている人も多いかと思います。
皆がやっているから大丈夫とは限りません。
SNSはインターネット上の「公の場」です。
自分以外の人が撮影した画像を無断で使う行為は著作権の公衆送信権の侵害に当たります。
また著作権だけでなく、芸能人個人の肖像権も侵害しているので、ダブルでアウトになります。
引用元のURLを明示した引用であっても、著作権違反になる可能性があります。詳しくは後述する章「『引用』であれば著作権侵害にならないって本当?」をご確認ください。
著作者の許可を得た上で投稿する場合は、違反になりません。
さらに、Twitterでは引用リツイート、Instagramはリポスト、ブログでは公式SNSアカウントの投稿を埋め込むと、「引用の範囲内」とみなされ、問題ありません。
商品画像を載せて紹介する
購入したアイテムの商品画像をブログなどで紹介する人も多いのではないでしょうか。
自分でうまく商品を撮影できずに、購入先のWebサイトから商品画像を転載して紹介した場合は、著作権法の複製権、公衆送信権侵害にあたります。
ただし、アフィリエイトリンクなど、転載が許可されている場合であれば企業ロゴや商品画像を掲載することは可能です。
テレビ番組の動画を投稿する
テレビ番組を自分で録画する行為は、私的複製として著作権法上で認められています。
しかし録画したテレビ番組の動画をSNS上にシェアする行為は、著作権法の複製権、公衆送信権を侵害しています。
「UFC動画無断投稿事件」という有名な判例があり、 総合格闘技「Ultimate Fighting Championship(UFC)」の試合映像を無断で「ニコニコ動画」に投稿した被告が、著作権違反として有罪判決を受けています(東京地判H25.5.17)。
ただし、正規配信サイト によるテレビ番組の共有用URLを投稿した上でのシェアであれば問題はありません。
アーティスト楽曲をBGMに使った動画を投稿する
アーティストの楽曲をBGMに使った動画をSNSに投稿する行為は原則として、著作権法上の複製権と、公衆送信権の侵害にあたりますが、投稿したSNS媒体がJASRAC(ジャスラック:一般社団法人日本音楽著作権協会)と年間包括契約を結んでいる場合は、管理している楽曲のみアップロードしても著作権違反にはなりません。
Instagram、Facebook、TikTok はJASRACと包括契約を結んでいるので、アーティストやアイドルの楽曲をBGMに使うことができます。
ただし、Twitterはまだ契約していないのでお気を付けください。(2022年3月現在。参考: https://www.jasrac.or.jp/smt/news/20/ugc.html)
Instagramのリールで、BGMに話題曲を使っても違法行為にはあたりません。
「歌ってみた」動画を投稿する
YouTubeやニコニコ動画で最近人気を集めているのが「歌ってみた」動画です。
話題曲や人気曲を自分で歌い、世界中に発信し、コメントをもらえるのが魅力です。
「歌ってみた」動画に関しては、個人が投稿する動画に限り、ほとんどの曲を許可なく自由に使っても良いことになっています。
というのも、メジャーな動画サイトやの多くは、国内外の有名アーティストの楽曲の著作権を管理するJASRACと年間包括契約を結んでいます。
YouTubeやニコニコ動画はJASRACと包括契約を結んでいるので大丈夫ですが、許可なく使えるのは、歌詞とメロディーだけ。曲を勝手にアレンジしたり、替え歌で動画をアップしたりすると、著作権上の問題となる可能性があります。
「歌ってみた」動画に投稿するときは、オリジナルにできるだけ忠実に歌うことが必要になります。
「無断転載」と判断されたら罪の重さはどれくらい?

無断転載によって著作権を侵害してしまった場合、その時点で犯罪者となり、逮捕されるのでしょうか。
著作権侵害は、基本的には「親告罪」であり、被害者である著作権者が訴えない限り、罰せられません。
つまり、著作権を侵害すると即犯罪者になる、というわけではないのです。
ただし、著作権侵害の中には「非親告罪」となる行為も存在します。
例えば、著作者が死亡した後、勝手に著作物を改変する行為や、間違った著作権者の氏名が表示された複製物を配布する行為など、悪質と認められるものは、被害者の求めにかかわらず、訴えられる可能性があります。
刑法上の罰則は、著作権、出版権、著作隣接権の侵害は、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金、著作者人格権、実演家人格権の侵害などは、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金などとなっています。
また、法人などが著作権等(著作者人格権を除く)を侵害した場合は、3億円以下の罰金が科せられます。
「引用」であれば著作権侵害にならないって本当?

著作権には保護期間があり、その期間中に勝手に利用することはできないのが原則ですが、個人的に使用する場合や引用として使う場合、公共図書館でコピーする場合などであれば、許可をもらわなくても、著作権侵害にはなりません。
著作権侵害にならない、正しい引用方法を紹介します。
著作権法における「引用」とは?
「引用」とは、何かを説明するために、他人の著作物の一部を自分の著作物に使わせてもらう行為です。
著作権法第32条によると、
「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」
と定めています。
他人の著作物を引用する場合は、著作権法上認められた形で「引用」し、引用の目的の範囲内で行う必要があります。
「引用」とすれば、何でもかんでも著作権違反にはならないのか?・・・というと、勿論そんなはずはありません。
著作権違反とならない形で引用をするためには、少なくとも以下の4つの点を全てクリアしている必要があります。
「出典」さえ明記していれば「引用」というわけではない
出典元が明記されている場合のみ「引用」が適用されます。
著作物を見たり聞いたりした人が、どの著作物から引用したのかが分かるように明記します。
例えば、楽曲が引用元となっている場合は、CDやDVDなどのタイトル、レコード会社、作詞者、作曲者、実演者などを記載します。
ブログなどでWebサイトを引用するときは、WebサイトのタイトルやURLを記載したり、リンクを貼るなどして引用元を明らかにしなければなりません。
主従関係が明確である
正当な範囲といえるためには、著作物と引用部分の主従関係、すなわち、引用部分以外の著作物が「主」、引用する他人の著作物が「従」という主従関係が必要です。
自分の著作部分の方が他人の著作物よりも大きい部分(量)を占めているかどうかだけでなく、文章の内容など、質的な面も判断材料となります。
引用部分がはっきり区別されている
著作物と引用部分が明確に区別されている場合のみ「引用」が適用されます。
引用した部分を「」(かっこ)でくくるなど、どこが引用部分なのかを分かりやすく示す必要があります。
引用の目的が正当な範囲内である
引用の目的が正当な範囲内でのみ「引用」が適用されます。
また、引用する理由と必然性がはっきり分かるようにする必要があります。
例えば、特定のニュースに対する意見を自分のブログで発表したいとき、元となるニュースがどんな内容かを明記しないと、読み手には伝わりません。
意見を述べるための前提情報とするという理由があることから、引用する必然性が認められます。
必然性のない引用は、自分の著作物、他人の著作物、双方の価値を下げてしまう恐れがあるため、誰が見ても必要と思う引用かどうかを、客観的に判断する必要があります 。
まとめ
誰でも気軽に投稿できるSNSですが、何気なく行った投稿が著作権侵害となることもあります。
SNSへの転載は、どこからがNGなのか、またどのようにすればOKなのか、理解しておくことが大切です。