支払期限日の「60日ルール」とは?~下請法ポイント解説②~
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支払期限は「どんな事情があったとしても」納品物の受領日から60日以内が基本!
下請法第2条の2では、「親授業者は物品(役務提供の場合、役務が提供された日)から起算して60日以内を支払期日とし、期日までに下請代金の全額を支払う義務がある」としています。
これが所謂「下請法の60日ルール」と言われるもので、公正取引委員会の統計によると、下請法の違反事例の中で最も件数が多いとされています。
なぜ違反件数が多いのか?
その理由について以下で考察していきます。
発注者が意図的に支払いを遅延させたわけではなくても、下請法の違反行為になってしまう
例えば納品物が複雑なコンピュータープログラムであったり、かなりの数量であったりした場合、当然のことながら検査には相当な日数を要します。
しかし、下請法で義務付けられている支払期日は「検収完了日」から起算するのではなく、「納品日」が基準となっています。
つまり、検収が終了していなくても(納品物に不良品が含まれる可能性が残された状態であっても)、支払期日には下請代金を「全額」支払わなければ違反となってしまいます。
また、企業によっては会計システムの設計上、毎月10日を「締め日」とし「翌月末払い」といったような社内ルールが存在する場合も多いのではないでしょうか?
このような場合、納品が例えば7月11日であった場合、支払日は9月30日となってしまい、このような場合も「60日ルール」に違反してしまいます。
さらに、下請事業者が60日以降の支払期限に合意していた場合や、下請業者のミスで請求書の発行が遅れた場合等であっても、親事業者は「請求書のあるなしにかかわらず、60日ルールを遵守しなければならない」とされています。
親事業者にとっては大変厳しいルールであるといえるでしょう。
これらの例から分かる通り、発注者が意図的に支払いを遅らせている場合ではなくても違反を指摘されてしまうことが、違反件数の多さに繋がっていると考えられます。
発注者は違反にならないよう、十分に注意を払わなければなりません。
代金の支払いが遅延した場合、罰則やペナルティは発生するか?
「60日ルール」の違反の場合、発注者は、納品物の受領後60日目から、実際に支払いを受けた日までの期間に対し、年率14.6%の遅延利息を支払わなくてはなりません。
また、親事業者は公正取引委員会から「勧告」や「指導」を受ける場合があります。勧告や指導を受けた企業は、公正取引委員会のホームページで企業名が公表されてしまい、企業イメージを大きく損なう虞があります。
ただし、違反が発覚した場合であっても、一定の条件を満たした上で自己申告を行うことにより、勧告が回避できる場合があります。
親事業者は違反が判明した場合、速やかに弁護士に相談をする等、勧告の回避のためのアクションを起こすことが重要となります。