契約書の規定内容が無効になる場合とは?

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「契約自由の原則」と「強行法規」

民法の基本原則の1つに、「契約自由の原則」というものがあります。

大まかにいうと、「どんな内容の契約を、どんな相手と、どのような手段で締結するもの当事者の自由である」という考え方です。

民法では多くの規定が「当事者間での合意内容が、法律の規定よりも優先される」という「任意規定」です。

対して、たとえ当事者間の合意があったとしても、法律の規定が優先されるものを「強行法規」といいます。

つまり、優先度を簡単に表すと、「強行法規>当事者間の合意や特約>任意規定」となります。

苦労して作り上げた契約書であっても、強行法規に違反している条項は無効となってしまうため、注意が必要です。

強行法規と任意規定(任意法規)の見分け方

残念なことに、法律の条文内に「強行法規である」といった内容が明記されている場合は稀です。

また、この二つを判別するための明確な基準といったものもありません。

「法律の条文に『無効とする』、『・・・してはならない』、『・・・しなければならない』といった文言が使われる場合は、強行法規と解される可能性が高い」という程度の目安はありますが、過去の判例や最新の学説等を考慮しながら検討しなければならないため、判断には高い専門知識を要します。

そもそも強行法規は、「弱者を守るため」のものです。

取引上の優位な立場を利用して無茶な条件の契約を結ばせた場合、その規定内容を無効にする手段が必要だからです。

従って、「労働法」や「下請法」のように、弱者の保護を目的とする法律では、強行法規が多く、「民法」や「会社法」のように公共性の高いものについては、任意規定が多くなる傾向があります。

強行規定の具体例

私たちの業務と関連の深い法律で、強行規定の例をいくつか挙げてみます。

まず、「下請法」ではほぼ全ての規定が強行法規であるとされています。

特に、「発注書面の交付義務」や「遅延利息の支払い義務」等の親事業者の4つの義務や、「買いたたきの禁止」、「代金の支払遅延の禁止」、「返品の禁止」等の11の禁止事項については細かい部分まで遵守する必要があります。

他にも「労働法」は、最低労働条件を定めるための強行法規とされています。

従って、労働法に違反する内容の契約を締結しても、違反条項については無効となることに注意しましょう。

実際の契約業務では、契約書の内容を詳細に検討、「強行法規違反になっている条項はないか」を確認の上、もしそのような条項が含まれている場合は、その条項を削除したり法律の規定内に収まるように修正したりする必要があります。