リモートワークの普及と新しいNDA

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リモートワークの普及で変わる機密情報の扱われ方

コロナ禍により一気に普及が進んだ「リモートワーク」という働き方により、実は多くの企業で頻繁に締結される「秘密保持契約(NDA)」の内容にも見直すべき点が指摘されています。

リモートワークの普及前は、会社の業務はオフィス内で行われるのが一般的でした。従って、他社から開示された秘密情報も、基本的にはオフィスの建物内から外部に持ち出されない前提で、秘密保持の条項が構築されている場合が殆どです。

ところが、リモートワークの普及により、自宅やコワーキングスペース等においても秘密情報が閲覧されるようになることで、情報漏洩のリスクが思わぬ形で高まっています。

リモートワークのセキュリティー、注意すべきはアナログのリスク

勿論、リモートワークを行うために、それぞれの企業が万全のセキュリティー対策を施していることでしょう。

しかし、情報漏洩のリスクは、実はもっとアナログな部分に潜んでいると考えるべきです。

例えば自宅で作業する場合を想定してみてください。コワーキングスペース等で作業をする場合に比べ、どうしても気持ちが緩んでしまうことはないでしょうか? アニメ制作業界では、人気の漫画作品のアニメ化や映画化の情報など、厳重な情報管理が必要な情報がやり取りされるケースが多くあります。

メーカー等で開示されるような技術資料であれば、同居の家族が目にしても中身を簡単に理解することは困難ですが、これらの秘密情報は専門知識を持たない人にも理解でき、かつ、多くの人の興味関心を引く情報である、ということが非常に厄介なのです。

どんなに技術的なセキュリティーが施されていても、家庭内で作業中に、パソコンの画面を家族に見られてしまったり、オンライン会議の音声が聞かれてしまったりといった、非常にアナログな側面での情報漏洩を防ぐのは実は大変困難であり、一人一人の社員のモラル意識が問われる問題です。

SNSを通した情報漏洩の脅威

更に、昨今では中高生はもちろん、小学校も高学年になってくるとスマホなどのデジタルツールを使いこなせる子供たちが増えています。ここで問題なのは、彼らはツールの操作知識だけが発達しており、情報に対する倫理観や「守秘」の観念といったリテラシーの発達が追い付いていない場合が多いということです。

親のパソコンのディスプレイに、人気の漫画のアニメ化の情報が表示されているのを目にした場合、ひと昔前であれば、学校の友達にこっそり話すといった程度の被害で済んだかもしれませんが、今は10代の多くが個人のSNSアカウントを所持するご時世です。クラスの友達に話すような気軽さで、秘密情報をSNSにアップされてしまった場合、被害は甚大になってしまうでしょう。

リモートワークの普及とともに、社員本人だけでなく、その家族や同居人から情報が流出した場合の補償をNDAにどのように規定すべきか、また、各社員は家庭での秘密情報の扱いを再度見直すとともに、家族にも守秘義務の重要性をきちんと理解させるなど、新しい働き方に合わせた情報管理が重要となっています。