「重大な過失」は「故意」や「過失」とどう違う?
不法行為や契約の違反が起こるとき、その原因となる行為が「不注意」によって引き起こされた場合は「過失」と判断されます。
一方、その行為が「わざと」行われた場合には「故意」と判断され、一般的に過失の場合よりも重い責任や罪に問われます。では「重大な過失」とはどのようなものでしょうか?
「重大な過失」とは?
わずかな注意を払いさえすれば予見や防止が可能であったにもかかわらず、それを漫然と見過ごした場合などは「重大な過失」と判断され、一般的に「単なる過失」とは区別されます。
サッカーのファウルの中でも、悪質性や危険性の高いものには「イエローカード」ではなく「レッドカード」が適用されるのと似ている、と説明すると分かりやすいかもしれません。
例えば、交通事故の場合、飛び出してきた人を誤って轢いて怪我を負わせた場合は「過失」となる可能性が高いですが、スマホの画面に気を取られて轢いてしまった場合は「重大な過失」と判断される可能性が極めて高いでしょう。
「重大な過失」は「故意」と同等に扱われる場合が多い
「重大な過失」は「故意」と同等に扱われる場合も多いため、「過失」の場合はそれが「重度な過失に相当するか否か」がしばしば法廷で争われます。
契約書の損害賠償に関する条項にも、損害賠償の対象となるのは「故意または重大な過失による場合」と限定されている場合もあり、「重大な過失か否か」の判断は原告・被告両者にとって、まさに死活問題となることも多いでしょう。
実務において気を付けるべきことは?
例えば業務委託契約で仕事を受注する側の立場であれば、巨額の損害賠償の対象として考えられるケースとして「情報漏洩」があります。
エンタメ業界では、情報漏洩は作品のプロモーション戦略や売上に大きな影響を与えかねません。万一情報漏洩が発生した場合も、それが「重大な過失によるものではない」と主張するに足る明確な根拠を提示できるようにしておくことが重要です。
社内のセキュリティー環境、情報閲覧者のログ管理、などの他に、「情報管理規定が設けられている」「セキュリティーやコンプライアンスに関する研修を全社員が受けている」といった、社内の情報管理意識の高さなども有効に働く場合があります。
逆に、杜撰な情報管理体制が露呈した場合、「重大な過失」と判断される可能性が極めて高くなるでしょう。
社内体制の整備は一朝一夕では成しえません。
大きな仕事の受注に備えて、日ごろから企業のコンプライアンス意識の素地を養うことが重要といえるでしょう。