「世界観」や「キャラ設定」、「あらすじ」に著作権は発生する?

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「世界観」に著作権は発生しない

そもそも「世界観」とは、非常に抽象的なものです。

一方、著作権の保護対象は「著作物」に限られます。

つまり、対象に「著作物性」が認められなければ、そもそも保護対象にはなりません。

著作権法では、著作物の要件として

(1)「思想又感情」の表現であること、

(2)「創作性」があること、

(3)(具体的に)表現されているもの、

という3つの要件を全て満たすことが求められます。

「世界観」については、この3つの要件のうち、特に(3)の要素が欠けていると判断されます。

「キャラ設定」の著作物性は、設定の具体性やビジュアルイメージの有無に左右される

では、「キャラ設定」の場合はどうでしょうか? 

例えば「メガネをかけた、内気な小学生の男の子」というだけでは、具体性に著しく欠けています。

一方、「黄色いシャツに紺の半ズボンを履いた、野比のび太君という名前の11歳の男の子で、顔はこんな感じ」と、細かい服装や年齢、外見のイメージ図等も用意されている場合、十分な具体性を伴うため著作物性が認められる可能性が高いでしょう。

マンガやアニメの場合、キャラの設定に「絵」の要素が加わるため、性格や年齢などの設定が無くても「絵画の著作物」として著作物性が認められる場合が多くあります。

一方、小説の登場人物の場合、キャラクター設定がどんなに具体的に行われていても、キャラクター設定のみで著作物性を主張するのは極めて困難です。

著作物性の判断基準は「創作性」、「具体性」と「オリジナリティ」

マンガや小説の著作物性の有無を判断する際に、最も重要視されるのが(2)の創作性です。

例えば文章の場合、文字数の多寡だけでは著作物性は判断できません。

短い文章でも俳句やキャッチコピーのように著作物性が認められるものもあれば、全国の天気予報のテロップ文のように、「事実を淡々と羅列しただけ」として著作物性が認められないものもあります。

なお、「作品全体」は勿論のこと、「吾輩は猫である」の冒頭のように、作品の「一部分だけ」であっても著作物性が認められる場合もあります。人気漫画の有名シーンもこれと同じです。

また、「あらすじ」については、他の作品と差別化が可能な程度の具体性が伴うかどうかが判断基準となります。

「男の子が鬼退治に行く話」というだけでは、「桃太郎」を思い浮かべる人もいれば「一寸法師」を思い浮かべる人もいるでしょう。

一方「桃から生まれた男の子が、きび団子と引換えに犬と猿とキジを仲間にして鬼退治をする話」という程度まで説明することで著作物性が認められる可能性があります。

桃太郎の場合は設定のオリジナリティが強烈なのでこの程度の短いあらすじでも著作物性が認められる可能性がありますが、どんなに長文で具体性があっても、オリジナリティに欠ける内容であれば「あらすじ」だけでは著作物性が認められない場合も当然あるということを理解する必要があります。