「トレース」や「模写」に著作権は発生する?
「著作物」として認められるためには「創作性」が必要。「創作性」には「個性」が必要
作品に著作権が生じるためには、その作品が「著作物」である必要があります。
そのためには、3つの「著作物性の要件」を全て満たしている必要があります。
著作物性の要件は著作権法で規定されていますが、3つの要件のうちの1つが「創作性」です。
では「創作性」とは何か?というと、「個性が発揮されている」というのが判例上の通説となっています。
つまり、「誰がやっても同じものが完成する」というもの(簡単な統計データや、名簿等)は著作物としては認められません。
一方、同じリンゴを題材に複数人でデッサンを行った場合、完成する作品同士に類似性は認められるかもしれませんが、1つ1つに描いた人物の個性が現れるため、それぞれの作品は著作物として認められます。
「トレース」や「模写」には著作物性はない
では「トレース(他社の作品を忠実に「なぞった」もの)」や「模写」はどうでしょうか?
他社の作品を「忠実になぞった」り、「そっくりに真似した」りしたものに、創作性や個性が認められるはずがありません。
つまり、トレースや模写によって作成された作品に著作権は発生しません。
ただ、コラージュのように、他社の作品を再構成したり、トレースした作品の色調や背景を新しく作成したりした場合などは、作品(の一部)に著作物性が認められる場合もあります。
ただ、こういった作品には元ネタの著作物の二次著作物となる場合が多く、原著作者の権利の干渉を受けることになります。
「トレース(トレス)」や「模写」をすると著作権侵害になる?
トレースや模写によって作成された作品に著作権が発生しないからといって、原作者に無断でトレースや模写を行った場合、著作権侵害となる可能性があります。
自分の練習用や家庭内で楽しむ目的でトレースや模写を行った場合、「私的利用の範囲内」として著作権侵害にはなりません。
しかし、いくら「個人の楽しみ」といっても、トレースや模写によって作成された作品をSNS等で公開した場合、著作権侵害になります。
あたかも「自分で描いた」というような形で公開した場合は勿論のこと、たとえ「模写しました」と明言した上で公開したとしても、やはり著作権侵害となります。
なお、アニメや漫画の背景に、ネットから拾ってきた適当な画像をトレースして使用するのも著作権侵害になります。
街並みや風景の写真にも著作権が発生している場合があるからです。
トレース用の素材を探す場合は、著作権フリーの画像をまとめたサイトを使用するのが安全です。