テレワークで生産性が低下する理由|生産性向上のためのポイント
近年、新型コロナウイルス感染症や災害の発生によって、働き方の環境が大きく変化したという方も多いでしょう。
自宅にいながら仕事ができるテレワーク制度を導入した企業も増えましたが、テレワークによって生産性が低下したという意見も多く、無視できません。
生産性の向上が目下の課題であるテレワークですが、まずは生産性が低下した原因を探ることが大切です。
ここでは、生産性が低下した原因や逆に向上した理由を調べ、そこから見えるテレワークの生産性向上のためのポイントをまとめました!
目次
テレワークで生産性が低下した理由

経済産業省の資料によると、職場勤務と比較してテレワーク(在宅勤務)の方が生産性が低いと回答した割合は、労働者が82%、企業側が92%と大多数を占めています。
これは、職場と変わらない(43.5%)、テレワークの方が高い(41.2%)というアメリカでの結果とは対照的です。
日本人がテレワークの生産性が低いと感じる理由として考えられる要因は以下の通りです。
- テレワークのための設備や通信環境がない
- コミュニケーションが取りにくい
- 紙の書類やアナログ処理が多い
- 自宅に作業スペースがない
こうした要因が重なって、日本国内では労働者・企業側ともにテレワークでの働きにくさを感じている可能性があります。
参照URL:https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/1335263.html
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/80990?page=3
参照元:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/seicho/seichosenryakukaigi/dai7/siryou1.pdf
テレワークのための設備や通信環境がない
テレワークを行う社員の全員が、通信環境が整っているとは限りません。
必要な設備や環境が整っていないために、業務が思ったように進まないということもあるでしょう。
パソコンなどの周辺機器だけに限らず、デスクや椅子がテレワークに適しておらず、身体的な負担から作業効率や生産性が低下する可能性もあります。
コミュニケーションが取りにくい
テレワークでは基本的にテキストチャットや、場合によってはビデオチャットを用いてコミュニケーションをとることになります。
日本社会では相手の表情や間を読むといった、言葉以外の要素も会話の中で重視されるため、会話が進まなかったりコミュニケーションが円滑にいかなかったりという事態が起きることもあるようです。
また日本のビジネスでの意思決定は、一人ないし少人数の人が責任を持って決定権をもつのではなく、その都度全員で話し合いなどを行うスタイルを好むため、スピード感が伴わないとも考えられています。
ただでさえ遅いと言われていますが、テレワークで顔を合わせられない環境だと、余計に物事の決定に時間がかかるといったことも考えられます。
紙の書類やアナログ処理が多い
書類が紙ベースで会社にしかない、押印などの処理がまだデジタルに対応していないなどの場合、自宅にいては取引などが完了せず人が動かなければ仕事にならないといった事態も起きています。
日本ではIT技術が遅れている訳ではないにも関わらず、ビジネスのデジタル化は遅れている側面があります。
そのため、テレワークになると、自宅と会社の往復が結局必要になり、生産性が低いと感じる要因になっていることが考えられます。
自宅に作業スペースがない
日本の地勢上、仕方のないことですが日本の家は世界と比較して小さく、十分なスペースがないことも理由の一つとして考えられます。
自宅にオンライン会議を行うための部屋を確保できず、小さな子供と同じ部屋で行わざるを得ないなど、ニュースなどで話題になったこともありました。
生活スペースと仕事スペースを分けることができず、仕事に集中できないために、仕事の生産性が低下してしまうケースも起こり得るでしょう。
テレワークで生産性が向上した理由

テレワークをすることで逆に生産性が向上したと感じている企業もあります。
テレワークで生産性が向上した理由として、以下のことが考えられます。
- 通勤時間が短縮できる
- 人材確保がしやすい
- BCP対策ができる
- オフィスのコストを減らせる
通勤時間が短縮できる
テレワークにすることで、通勤時間や外出の準備などの時間を短縮することができます。
総務省の統計によると、全国の平均通勤時間は片道39分、往復1時間19分です。
通勤時間を短縮できるということは、朝や夕方の満員電車を避けられるだけでなく、これらの時間を各々で有意義に過ごすことも可能になります。
仕事が忙しい時には早めに取り掛かるということもできますし、ストレス軽減のための活動に当てることもできます。
そうすることで結果的に仕事の生産性は高くなるといえるでしょう。
人材確保がしやすい
テレワークは、働く場所を選ばないため、遠く離れた地域に住んでいる人も雇うことができます。
その結果、人事雇用にかかる労力を軽減できるだけでなく、会社にとって必要なスキルを持った人材を雇用しやすくなるため、人事業務や会社全体としての生産性の向上にもつながるといえます。
BCP対策ができる
BCP対策とは事業継続計画のことをいいます。
近年大流行した新型コロナウイルス感染症に代表されるパンデミックや、地震や豪雨などの災害時であっても、事業を継続できる環境を整えることが、企業に求められています。
災害や感染症という観点から考えると、社員全員が一つのオフィスに集まっている状態はリスクが高い状態といえます。
コロナ感染症の陽性者がでたりオフィスが被災したりすると、プロジェクト関係者が出勤できなかったり、必要な書類を紛失したりする可能性があります。
場合によっては事業を一時中断することもあるでしょう。
しかしテレワーク体制を確立しておけば、社内での感染拡大を防止できるので、感染症による事業の中断の可能性はかなり低くなります。
災害時などにおいては、事業に必要な書類をデジタル化しておけば、社員の安全を確保でき次第仕事を進めることもできるでしょう。
こうした理由から、万が一の事態の時にテレワークは生産性を確保する手段になり得るということができます。
オフィスのコストを減らせる
テレワークを導入すれば社員全員が出社する必要がないため、広いオフィスを借りる必要がないだけでなく、デスクやチェア、周辺機器などを必ずしも全員分用意する必要もありません。
本来必要であったコストを削減できれば、そのリソースをその他の業務の効率化に活用し、生産性を高めることができるでしょう。
テレワークの生産性向上のためのポイント

ここまで紹介してきたテレワークによる生産性の向上・低下の理由から、テレワークの生産性を向上させるためには、以下のポイントを押さえる必要があるということが分かります。
- デバイス・通信環境の充実
- ペーパーレス化
- コミュニケーションツールの導入
デバイス・通信環境の充実
生産性を上げるためには、PCやタブレットなどのデバイスや、テレビ会議のための通信環境を充実させることが大切です。
しかし、コストが低ければなんでも良いわけではありません。
例えば顧客の個人情報を扱うような業種であれば、セキュリティが強力なものを導入する必要があります。
またWeb会議などを行うのであれば、エクセルやパワーポイントなどを同時に立ち上げても重くならないよう、処理能力が高く、メモリが大きいものを選ぶ必要があります。
このように、どのような用途でデバイスを使うことが多いのか、どのような機能を重視する必要があるのかを考慮することで、生産性の低下を防ぐことができます。
ペーパーレス化
社内の書類をできるだけペーパーレス化し、テレワークでもPCなどのデバイスからアクセスできるようにすると効率が良くなるでしょう。
紙による情報管理では、必要書類が収納されている場所まで足を運び、手動で探すといった手間が生じるため時間がかかります。
ただしあらゆる書類がペーパーレス化できるわけではありません。
法律や行政書類の中には、紙での保管が義務付けられているものがあるためです。
どんな書類が電子化できるのか、出来ないのかをしっかり整理しながらペーパーレス化を進めましょう。
コミュニケーションツールの導入
テレワークの生産性を上げるには、コミュニケーションツールを導入することもおすすめです。
テレワークは各々が自宅で行うケースが多いため、コミュニケーションが取りにくいものです。
適度なコミュニケーションをとることで、テレワークであっても一体感が生まれ、仕事の連携もとりやすくなります。
社員同士が積極的にコミュニケーションをとることができれば、改善点なども見つけやすく生産性の向上にもつながるでしょう。
まとめ
テレワークの生産性低下は、特に日本国内で顕著な傾向であり、アメリカなどの諸外国では真逆の結果が得られています。
これは国内のテレワークには改善の余地、また伸び代が大きいということであり、すぐにでも改善すべきことでしょう。
日本のITの技術自体は世界的に見ても進んでいることを踏まえると、生産性の向上にはIT技術を活用する側の認識を変えていくことが大切だといえます。
会社が一丸となって積極的にデジタル化を進めることが、テレワークの生産性を上げることにつながるでしょう。